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2008-05-13

張愛玲 (チャン・アイリン) 『傾城の恋』

張愛玲 (チャン・アイリン)
(本名:張煐 1920年上海生まれ~1995年米国ロサンゼルスで没)

以前、阿吉さんが映画『色・戒 ラスト、コーション』の原作者、
そして高虎(ガオ・フー)の舞台、「紅玫瑰与白玫瑰」の原作と言うことで
台湾で本を探したり、ブログでも取り上げていらっしゃったので、
興味を持ちました。

張愛玲のプロフィールなどは、阿吉さんがきっちりまとめていらっしゃるので
ぜひそちらご覧下さい(^^;

さて、映画「ラスト、コーション」の原作者として初認識した張愛玲ですが、
彼女の代表作とされているのは「傾城之恋」(初出 『雑誌』1943年9月、10月号)だそうです。
しかし残念ながら邦訳本は現在絶版。
購入を迷っていたところ、幸い区の図書館にあり、読むことができました。

傾城の恋傾城の恋
(1995/03)
張 愛玲

商品詳細を見る


ちなみにこの本の中には「傾城の恋」の他に同時期に執筆された、
「金鎖記」(初出 『雑誌』1943年11月、12月号)
「留情」(初出 『雑誌』1945年2月号)
2編の短編も入っています。


「金鎖記」

舞台は1910年代初頭から40年代の上海。
混乱を避け北京から上海へと居を撮した姜家の物語。

主人公、七巧(チーチャオ)は油屋の娘だったが、
買われるようにして不具者である姜家の次男に嫁ぎ、
長白(チャンパイ)、長安(チャンアン)という二子をもうける。
しかしその出自と気の強さから、常に姜家では疎まれる存在であった。
夫である次男と姑の死により、遺産を手に入れた七巧は
ようやく姜家という檻から抜け出せたかに思えた。

月日は流れ、七巧は子供達をまるで鎖に繋ぐかのようにつねに影響下においていた。
娘の長安は初めての恋を期に七巧の支配から逃れようとするが・・・

七巧も、その子も結局は金の鎖に繋がれたまま、阿片に逃避し、
檻の中に閉じこめられてただ漫然と時を過ごし、枯れるに任せているかようである。
救いのない、重い後味の作品だった。


「留情」

1940年代前半の上海を舞台に、再婚した年の離れた夫婦、
淳于敦鳳(チュンユートンフォン)と米晶堯(ミーチンヤオ)の、
ある一日の出来事と心の揺らぎを淡々と描くことによって、
敦鳳が二人の間にまだ静かな愛情が存在することを再確認する物語。

劇的な出来事は特にないが、たあいのないインコの話を、
序盤、出かける時には話す機会を失ってしまっていたのが、
二人で叔母の家を訪ねた後、家路につく最後の箇所では、
「あのインコの事を忘れずにこの人に教えてあげよう」
と、敦鳳が思うところが何となくホッとさせられ、読後感は良かった。


どちらも結構大人な味わいの小説で、時代背景が時代背景だけに
旧社会や世間のしがらみに翻弄され、ある時は抵抗し、またある時は妥協し、
あるいは敗北する人々の姿が描き出されています。


翻訳者との相性があまり良くなかったのか、
はたまた張愛玲の表現や文体との相性がそもそも良くないのか、
最初は文章のリズムがつかめずに苦労したのですが、
読み進むうちにだんだん慣れてきたのと、
やはり恋愛の成就という、最も前向き(?)なお話だったからか、
最後の「傾城の恋」が一番楽しく読めました。

「傾城の恋」

舞台となるのは他の作品と同様、1940年代初頭の上海、そして香港です。

不誠実な夫と離婚し、傾きかけた旧家の白家に戻ってきた白流蘇(パイリュウスウ)は、
流蘇のお金を使い果たしたうえ、彼女を邪魔者扱いしだした家族の中で、
いたたまれない思いで暮らしていた。

流蘇は妹のお見合いに付き添っていった日、
その見合い相手であるイギリス帰りの実業家、范柳原(ファンリュウユアン)と
なぜかダンスを踊る事になる。

友人の徐夫人に誘われ、香港を訪れた流蘇。
そこには范柳原が待っていた。
何度も会ううちに徐々に二人の距離は縮まる。
しかしなかなか結婚を口にしない柳原に、一度は恋心を否定し、上海に戻る流蘇だが、
もはや白家に彼女の居場所はなく、再び香港へ、柳原の元へと戻ってゆく。

そんな時、第二次大戦が始まり、香港は日本軍の攻撃を受け落城する・・・。


私は最初「傾城の恋」というと、恋することによって、
当事者達の所属する既存の世界(家や国家であったり、人間関係であったり・・・)が
崩壊してゆく物語なのだろうかと想像していました。

でもこの場合の「傾城」とは、日本軍による香港占領を指しており、
その生と死を強烈に意識させる非日常的な出来事が、
お互いに惹かれ合いながらも、それまで二人の間に存在していた壁を取り払い、
結婚へと至るという・・・、ある意味恋愛を成就させる物語でした。

范柳原という人物がなかなかミステリアスで興味深く、
お金持ちで強引、そのくせ繊細で・・・、な設定が、他の張愛玲の作品にでてくる、
身勝手なだけの男達と違ってハーレクインロマンス風といえるかも(^^)
出戻りという引け目を抱えつつも、流蘇が彼の思わせぶりな態度に振り回され、
抗いきれず、惹かれていく課程が上手く描かれていたと思います。

傾城の恋傾城の恋
(2004/04/01)
チョウ・ユンファ、コラ・ミャオ 他

商品詳細を見る


香港で制作された映画ではこの柳原の役ををチョウ・ユンファが演じている様ですが、
映画の出来がどうなのかはともかくとして、
ちょっぴりハレークイーンロマンスなこのお話にはぴったりの配役かも。
ぜひレンタルを探して見てみたいと思います。

あ、それから結局まだ映画『色・戒 ラスト、コーション』も見ておりません!!
原作は読んだので、記憶が薄れないうちに、早く見ないといけませんね。
ああ・・・、どんどん課題映画と課題図書がたまっていきます(^^; 
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傾城の恋

出張から帰ってきました! 読書がはかどるはかどる(^^) まやさんからの宿題だった 張愛玲 (チャン・アイリン)の「傾城の恋」の感想で...

comment

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No title

ユンファとミス・フォトジェニックのコラ・ミャオ共演の「傾城の恋」
お金持ちで強引で…という役、よく似合ってました。
原作は読んだことはないのですが、日本占領下という背景と、ロマンスというまったくちがった次元を合わせたところが、恋の行方を一層盛り上げていると思います。
たしかにハーレクインぽいかもしれません。

最初はあまり好きではなかったユンファですが、すごく幅のある俳優さんなんだなと、見ているうちにファンになりました。
今も渋い大人の男を演じる素敵な俳優さんですね。

「紅玫瑰与白玫瑰」もたしか映画化されてましたよね。
作者は同じだったのですね。雰囲気はどれもなんとなく似ている気がします。ちょっと気だるさがあるような…。
あくまで私のイメージですが。

>すー・すーすさんへ

「傾城の恋」も「紅玫瑰与白玫瑰」も、ご覧になっていたのですね!
気だるさというと、ちょっとアンニュイな雰囲気なのでしょうか?
うーん、気になりますねえ。

私は最初チョウ・ユンファは特に好きとも嫌いとも意識していなかったのですが、
黄暁明が新上海灘で、彼のやった許文強を演じるという記事を見てから、
気になって元祖(?)上海灘を見てファンになりました(笑)
いやー、確かにあの許文強というキャラはかっこいいです!
正直ストーリーは黄暁明が新上海灘より元祖の方が好みでした。

>日本占領下という背景と、ロマンス

決して結婚の二文字を口にしなかった柳原が、日本による占領という
特異な状況下で、ようやく蘇流との結婚を決意したというのは
危険な状況下で出会った男女は恋に落ちやすいという、
「吊橋効果」の延長ようなものなのかなあ、とも思いました。

まあ、現実の世界でも、そんな劇的なことでなくても、
何かきっかけがないと「結婚」に踏み切るのって難しいのかも知れませんね。
(私は経験無いので、あくまで想像ですが・・・)

ハーレークイン!

実は私も来週の出張のお供に、
図書館でこの本予約しました!
5月は徳間書店さんもコーエーさんも
武侠小説は発売が無いんですもんね・・・
読んだら私も感想アップしますね(^^)

張愛玲が何故、今、中国でアツイのか、
1冊読んだくらいではまだ解らないです…
やっぱり「近代文学」って感じですよね。
戦争が介入してきたり、「家」が絡んだりといった
混沌とした感じが。
現代女流中華作家代表って事で、
楊逸さんの「ワンちゃん」も来週読む予定です!

ハーレークインって読んだことないけど、
筋書きを聞くと確かにそんな感じなんだろうな~と思います。

>「吊橋効果」
異常な状態で始まった恋愛は長続きしないとか…(^^;
でも後押しするモノは必要かもしれませんね!

>阿吉さんへ

>読んだら私も感想アップしますね(^^)

楽しみにしています~(^^)

>楊逸さんの「ワンちゃん」も来週読む予定です!

おお、こちらも感想を楽しみにしています!

張愛玲の文章はかなり凝っているらしいのですが、
『傾城の恋』『色・戒』の二冊の邦訳を読む限り、
私にとってはそれが裏目に出たようで、
このセリフは誰が言っているのか瞬時に分からなかったり、
語の順番を変えたり、少し補足した方がいいのに・・・、等々、
細かいところが気になって結構ひっかかりました。

『傾城の恋』の三編は割と動きのあるストーリーだったので、
読みやすかったですが「色・戒」の特に後半二編は
阿吉さんも書いていらっしゃいましたが、
視点や時空間の変化がすぐにはつかめなくて苦労しました。
原文で読むとまた雰囲気が違うのかもしれませんが・・・、ね。

全体に漂う虚無感が現代中国でうけている理由なのかなあ・・・??

あ、それと、女性同士の関係の中の何とも言えない、
独特のいやらしさの、微細な描写は妙にリアルで巧い!!
これは男性作家には書けないだろうな~、と思いました(^^;
プロフィール

まや

Author:まや
読書、映画&ドラマ鑑賞、旅行、お絵描きが趣味。
ジャンルとしては歴史、文学、美術が好き。
今までヨーロッパが興味の対象だったのが、最近はユーラシア大陸を東進して中国に興味津々です。

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